廃墟から救われた、ヴィンテージのドア  
 

ニューヨーク・マンハッタンを走る地下鉄を「125 th Street」駅で降りると、そこはマンハッタン北部のハーレムと呼ばれる地区。アフリカ系アメリカ人の文化の中心地である。そしてメイン・ストリートの125th Street、別名「マーティン・ルーサー・キング通り」を3rd Avenueに向かって歩く。店舗群がひと段し、景色が荒涼としはじめる3rd Avenueと2nd Avenueの間に、廃墟にも見えてしまう程、古めかしいたたずまいの建物が見える。次々と人が吸い込まれているその入口の上には「Demolition Dept」の看板がある。

その建物の中に入ると、いつの時代のものか分からないような無数のランプが天井か釣り下がっている。ランプの他には洗面台や風呂、机までもが置いてある。展示されている家具類は、全て、相当な年代物と分かるようなものばかりである。「ここで扱っているものは、全てヴィンテージの品物です。かつ、店の名前からも想像できる通り、廃墟から持ってきたものなのです」、と1階にいる従業員は語った。

この店の名前は看板通り「Demolition Dept」。手っ取り早く言えばアンティーク・ショップということになるのだろうが、街中で見かける洒落たアンティークショップではない。「ここのある品物は、オークションから持ってきたり、どこかから購入してきたり、ビルから持ってきたりしたものです。殆どのアイテムはDemolition(廃墟、ビルなどの解体跡)から持ってきます」と説明するのは、この店のオーナーであるEvan Blum氏。

店の中を見て回ると、様々な品物が展示されている。1階には、ランプ類が中心に展示されている。そして2階には、洗面台、窓、シャッター、門、グリル、マントルピース、石、テラコッタ、そしてトイレまでもがが展示してある。これらは全てヴィンテージのものである。そして圧巻なのは、3階にある無数のドア。広大なフロアに優に1000枚を超えるドアが立てかけられている。これらも殆どが「Demolition」から持って来たものである。

「ここは美術館のようなものです。解体されたビルから持って来たドアといっても、非常に美しい。廃墟から持ってくるので品定めには注意を要しますが、一番大切なことは、見た目が良いことなのです」とBlum氏は語る。Demolition Deptは、この場所以外にも、別館に多くの商品を展示している。

Demolition Deptにあるアイテムは19世紀のものが中心となる。しかし、それ以外にも、歴史的に見て非常に価値があるアイテムも少なからず置いてある。「一番古い品物では、14から15世紀に掛けて造られたドアや、キャンパス・ストーンがあります。また、アルハンブラ宮殿の天井(Ceiling)も所有しています」、そしてBlaum氏は続ける、「Demolition Deptは建築の歴史を守るために、建物を構成する様々な部品を守っているのです。美しく芸術的に仕上げられたそれらの部品は新しい住居やビルの雰囲気をとても良くするのです」

なぜ、Blaum氏はこのような商売をはじめたのであろうか?「最初は趣味でしたが、約35年前位から同じようなことをしています。もともとは古いPhonographやMusic Boxなどを集めていました。ビジネスとしてこの場所に店をオープンしたのは10年くらい前からでしょうか」。そして現在、Blaum氏は、これを単なるビジネスではなく、アートや環境問題としても考えている。「気づかない人も多いかもしれませんが、昔のドアには芸術的なものが非常に多くあります。また、このビジネスは環境にもとても良いですよね。使わなくなったもを再利用しているのですから、グリーン・ビジネスでもあるのです」

Demolition Deptを訪れる客は米国人だけでなく、オーストラリア、香港、マカオ、日本から尋ねる人も多い。「この間はマカオのレストランがドアを買いに来ましたよ。新しく店をオープンしたり、店を改装する際に、古い雰囲気を出したい場合にこの店に来ることが多いようですね」

どこかで古いビルや建物が解体されるという情報をキャッチすると、Demolition Deptのスタッフは直ぐに駆けつけて、様々なアイテムを集めてくる。Demolition Deptのウェブサイトには、「If you have any building or demolishing projects coming up, give us a call. Our team of experts will guide you through the buying and selling of every type of artifact. (もしビルの解体プロジェクトがあれば、是非ご連絡下さい。Demolition Deptのエキスパートが、全てのタイプの芸術品の売買に関してガイドします)」とある。東京の都心部では再開発のプロジェクトが後を絶たず、中には歴史のあるビルも含まれている。貴重な芸術品を残すために、Demolition Deptにコンタクトしてみるのも良いアイデアかもしれない。(2007年10月5日掲載)

 


Photos by Urban Heritage Chronicle


Demolition Deptでは1000枚を超える
ビンテージ・ドアを扱っている


ニューヨーク、ハーレムにあるDemolition Deptの店舗


ドアの他、照明や机など、数多くの品を揃える。
殆どが解体された建物から持ってこられた物。


 
     
 
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